焙煎機は直火式、半熱風式、熱風式の3種類に大きく分類することができます。
※図は模式図ですので、実際の構造とは違います。
卓上型現代の焙煎機の中では最も単純な小型の焙煎機。豆の入ったドラムをモーターまたは手動で回転させ、ガスコンロなどで加熱してローストします。 ドラムは剥き出しになっているので、煙がドラムの中にこもることはありませんが、排煙装置(集塵を兼ねる)がないので、チャフが燃えてきつい燻り臭(スモーキーフレーバー)が豆につくことがあります。 構造上、焙煎のコントロールは難しいのですが、少量(200グラム程度)をローストできるため豆の品質を診るためのテストロースターとして主に利用されています。 |
直火式焙煎機ドラムとバーナーが外装で囲まれており、排煙装置のついた比較的小型の焙煎機。豆の入ったメッシュ状のドラムをモーターで回転させ、バーナーの炎で直接加熱するので直火式と呼ばれます。排煙及び集塵はファンで強制的に行うものがほとんどですが、小型のものでは自然排煙のものあります。 火力はガスの圧力計で、排煙はダンパーによって調整でき、温度計で豆の温度(完全に正確とは言えない)をリアルタイム(実際には微妙に遅れる)に計ることができるので、かなりのところ焙煎をコントロールすることができます。 直火式の特徴としては
(当店ではフジローヤル製の直火式5kg釜を使用) |
半熱風式焙煎機基本的な構造は直火式と変わらないが、バーナーの炎が直接ドラムに当たらない構造となっているもの。遠赤外線焙煎機も基本的にこのタイプ。 炎が豆に当たることがないので、こげ味や鋭い苦味をもったスモーキーフレーバーがつきにくく、火力を高めに設定できるので、直火式に比べ短時間で焙煎することも可能。 芳ばしい(こげ臭とは違う)香りを出すのは直火式に比べ難しいようですが、豆のふくらみも良く、ある意味万能型とも言えます。 |
熱風式焙煎機バーナーで熱した空気をドラムの中に強制的に送り込んでローストするタイプ。 熱風で焙煎するので豆の脱水力が強く、またむらなく短時間で焼き上げることができる。豆のふくらみも非常に良い。 その一方、香りが飛びやすく抜けた味になりやすいのでローストに時間をかけることができない。 構造も直火式や半熱風式に比べ複雑で、大型の焙煎機に向く。 |
この他にも超大型の連続式焙煎機など、いくつかの種類があります。 ※焙煎機にはそれぞれ特徴があり、一概にどれが優れているとは言えません。結局は操作する人が機械の特性と豆の品質を理解し、適切な焙煎を心がけることが大事だと思います。 |
自家焙煎コーヒー店で使用する5kg前後の焙煎機を設置するときに注意したいことがいくつかあります。
2.について
自家焙煎をアピールする為、お客さまから見える位置に焙煎機を設置することは大変有効だと思います。独立した部屋を確保し、ガラス越しに見えるようにできれば良いのですが、なかなかそうもいかない場合も多いと思います。その際は人の出入りの多い入り口付近を避けるようにしましょう。
(ちなみにGojuではモロ店舗入り口付近に設置してあります(^-^;
4.と5.について
排気をスムーズに行えるようにすることは焙煎機を取り扱う上で大変重要です。煙突の曲がり(エルボー)の部分では少なからず乱流が発生すると考えられますので、なるべく直線的に煙突を設置するほうが良いと思われます。よく言われる『横の長さの2倍以上の高さ』というのは、熱せられて密度が低くなった気体が上昇することによって負圧を発生させる煙突効果※を狙ったものです。
※煙突効果
煙突効果を言葉で説明するのは難しいのですが・・・。
まず、前提として今仮に高さ『L』cmの煙突があったとします。煙突の回りは大気に包まれており圧力=大気圧を受けますが、これは任意の位置からの高さ、すなわち大気の重さに比例します。
煙突の前後左右における高さはそれぞれ同じですからそれぞれの圧力は相殺されます。ここで仮に煙突の下辺を高さの基準として考え、この場所における単位圧力を『P0』とすると、煙突の上辺の単位圧力『P1』は『L』cmの大気の重さ分低くなります。
現実的には大気圧によって大気の密度は変わるのですが、ここでは一定だと仮定して『a』g/cm3とすると次のようになります。
P0 = P1 +(L × a)
この煙突において『P0』は底辺における上向きの力、『P1』は上辺における下向きの力です。ここで煙突の中にある気体の密度を『b』g/cm3とすると、煙突の底辺で受ける上向きの力『P0-1』は
P0-1 = P0 − P1 −(L × b)= P1 +(L × a)− P1 −(L × b)= L ×( a− b)
となります(回りくどい・・・汗)。
気体は温められると密度が減ります。上記の式から煙突の長さが長くなればなるだけ、あるいは煙突内部の気体の密度が低くなればなるだけ煙突底辺における相対的な上向きの力は強くなることが分かります(高さによる密度の変化や煙突内部を通過するに従う温度低下などは無視しています)。この力は加速度として働くので、この力が大きくなればなるほど気体の上昇するスピードも速くなり、更に上昇する気体には慣性の力が働くことにより、(注射器のプランジャーを引くように)煙突底部において負圧を発生させ周りの気体を取り込みます。これが所謂『煙突効果』と呼ばれる現象です。
さて、そこでなぜ『横の長さの2倍以上の高さ』なのでしょうか。これを理論的に説明するのはちょっと無理なのですが・・・。
取りあえず、ここでは単純に薪ストーブで考えてみます。
薪ストーブの上部から煙突が真横に『L』の長さだけ出て、その後『L』の長さだけ立ち上がったとします。また、ストーブの空気取り入れ口から煙突基部までの高さを『h』とします。
先ほどは気体の温度低下や密度の変化を無視しましたが、今度はこれを考慮しなくてはなりません。
気体は熱せられると密度が減り体積が増えます。理想気体の平衡状態を扱うボイル・シャルルの方程式では『PV = nRT』と表します。Pは圧力[atm]、Vは体積[l]、nはV内にある気体のモル数、Rは気体定数(0.082[l・atm/mol・K]=8.31451[J/mol・K])、Tは絶対温度[K](摂氏0度=273.15K)です。
外気温が摂氏27度の時、ストーブ内の温度が摂氏327度だったと仮定しますと、この式からストーブ内の気体の密度はおよそ1/2になることが分かります。
※モル(mol)
物質量の基本単位です。定義として、質量数12の炭素12Cの12g中に含まれる原子の数(アヴォガドロ定数≒6.02×1023)と同数の単位粒子(原子、分子、遊離基、イオン、電子)を含む系の物質量を1モルと言います。
もっと簡単に言えば、単位粒子がアヴォガドロ定数個集まったものを1モルと言えます。
単位粒子というのは反応の単位とも言え、例えば炭素(C)1モルと酸素分子(O2)1モルが反応して二酸化炭素(CO2)1モルが生成されます。これを酸素原子で置き換えれば、炭素(C)1モルと酸素原子(O)2モルから二酸化炭素(CO2)1モルが生成されることになります。
まず、温められた気体は空気取り入れ口での圧力『h × ( a − a/2 )』を受けて煙突の中を横に移動して行きます。初期の段階では温められた気体はゆっくりと煙突内の空気と入れ替わり、拡散しながら移動していきます。煙突が立ち上がるところまで来ると煙突効果によって摩擦等の抵抗と一致するまで徐々にスピードを増して行きます。
煙突内部を移動するごとに気体の温度は下がり、密度は次第に高くなって行きます。仮にLcm移動するごとに温度が80%ずつ低下したとすると、この煙突上部では初めの64%まで温度が低くなり、気体の密度も高くなります。
この時、空気取り入れ口で上向き(煙突出口方向)にかかる圧力をものすごく単純に計算すると
L × ( a − a×( 300 / ( 300 + 300×0.8)+300 / ( 300 + 300×0.64)) / 2) + h × ( a − a×(300/600))
= L × ( a−0.583a ) + h × (a−0.5a)
= a × ( 0.417×L + 0.5×h )
となります。
さて、上記の式では一応上向きの圧力が生じますが、実際のストーブ内の現象を考えると、薪が燃焼にしたがって固体から気体へと変わっています。つまり体積が莫大に増えている訳です。
煙突の横に伸びた部分では温度低下による密度の増加と煙が移動する際に受ける抵抗が増えるだけで、有効な圧力は生じません。抵抗と圧力とが相殺する形で流速は減り結果流量が減ります。煙突内部の流量がストーブ内で発生する煙の量に満たなければオーバーフローして空気取り入れ口から溢れてしまいます。
煙突の縦方向の移動でも温度が下がり密度は高くなって行きますが、煙突効果によって慣性の力も増し、生じる抵抗と釣り合うまで速度は上がります。
なお、先ほどの式で煙突の高さを2倍にして計算すると次のようになります。
2L × ( a − a×( 300 / ( 300 + 300×0.8)+300 / ( 300 + 300×0.512)) / 2) + h × ( a − a×(300/600))
= 2L × ( a − 0.608a ) + h × (a − 0.5a)
= a × ( 0.784×L + 0.5×h )
温度は下がり密度が増えますが、結果として1.8倍ほど上向きの力が増えています。
(もちろん、これらの式や値は非常にいい加減なものですので参考に留めて下さい。念のため)
気体が煙突内部を移動しているときは慣性の力も生じ、瞬間瞬間で煙突内部に負圧を発生させます。つまり『横方向の2倍以上の高さと』いうのは煙突効果を利用した上で煙がオーバーフローしない条件、言ってみれば経験則のようなものです(恐らく、特定の条件で厳密に計算すれば1〜2倍の間であるはずです)。
気体の流速及び流量は煙突の断面積で最高値が決定されますので、いくら煙突の高さを高くしても直径が足りなければ煙はオーバーフローしてしまいます。また、極端に横方向が長いと抵抗が増大して圧力と相殺したり、温度が低下しすぎて肝心の立ち上がりの部分で煙突効果を生じることが出来ず、いくら煙突を高くしても自然に煙は流れていきません。
うーん、あまり説明になっていないような(;^_^A アセアセ・・・
ところが現在の焙煎機はファンによる強制排気をおこなっているので、サイクロン(集塵機)を含めた横の長さが程ほどであれば、立ち上がりの煙突の高さはそれ程無くてもよいと私は考えています。極端な話、煙突の直径が十分であり、横の距離がごくみじかければ立ち上がりは必要ないのではないかと思います。
それより、煙突の設置と同等以上に重要なのが、外気の導入です。6畳程度のプレハブ小屋に5kgの焙煎機を設置すると、窓を締め切った状態では扉を外に開くのが明らかに困難になります。感覚的にはちょっとした業務用の換気扇に匹敵する負圧を発生させていると思います。このような状態ではいくら煙突を理想的に設置しても煙の抜けが悪く、焙煎に悪い影響を与えてしまいます。
したがって、焙煎機の周辺が煙突の末端より負圧にならないよう、十分な外気を室内に導入する必要があるわけです。その際、外気温に影響されないよう、導入口は焙煎機から離れた場所に設置する方が良いと思います。
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