コーヒーの実が赤く熟すと収穫が始まります。
小規模な農場や機械の導入が難しい山の斜面の農場では、人の手で一粒づつ収穫されていきます。
一方、機械の導入が進んだ大規模農場では、一列に並んだコーヒーの木を抱えるように機械が進み回転するポールのようなもので実を叩き落します。
このような大規模農場でも完全に熟しきった豆だけを特別に人の手で摘み取って、プレミアムコーヒーとして出荷しているところもあります。
収穫したコーヒーの実は精製されて果肉の部分が取り除かれコーヒーの生豆となります。
この精製方法には基本的に2つあります。
一つは収穫した実を天日で乾燥させた後、石臼や脱穀機のようなものでで果肉をつぶして種子(生豆)をとりだすもので、自然乾燥式またはナチュラルと呼ばれ、主に小規模な農場で行われています。
乾燥した実は黒く縮んで「コッコ」と呼ばれ、脱穀されずに生豆の中に含まれると「欠点豆」になります。
もう一方は大規模農場で行われている、水洗式またはウォッシュドと呼ばれるものです。
まず水槽に入れて収穫の際に紛れ込んだ葉や枝などを取り除くと共に、完熟した実が沈むことによって未熟の実と分別されます。分別された実は果肉除去機にかけられて果肉が取り除かれます。こうして取り出した種子は周りをパーチメントと呼ばれる強靭で粘着質の膜で覆われており、パーチメントコーヒーと呼ばれます。パーチメントコーヒーは更に醗酵槽と呼ばれる水槽に移され、パーチメントを醗酵させた後水洗いして取り除かれます。種子(生豆)の乾燥は大型の乾燥機で行うものが殆どですが、中には天日で行うところもあり、セミウォッシュドと呼ばれています。
ナチュラル(自然乾燥式)の豆は天日で乾燥させることによって甘味が増すとも言われています。確かにそのような気もするのですが、精製方法が違う同じ地域で取れた同じ豆を焙煎して比較したことがないので、私にはわかりません。
イエメン産のモカ・マタリーなどはナチュラルの代表みたいなものですが、精製に石臼を使うため、その破片がよく混入しています。また、天日で乾燥させるときに管理が悪いと乾燥具合にむらができたり、土の匂いが付着することもあります。乾燥の途中で雨にでも当たったら台無しになりますし、昆虫などの異物が混入していることもありますので、あまりメリットは無いといえるでしょう。
ナチュラルはその精製方法からパーチメントが取り除かれずに残っている場合が多いのですが、これは焙煎時に燃えてきつい燻り臭の原因にもなります。その一方、パーチメントがしっかりと生豆の表面を覆っているので水分の蒸発が少なく、生豆の長期保存に向くとの考え方もあります。
ウォッシュドの豆は基本的に管理がしっかりしているので異物の混入は殆ど見かけません。ナチュラルに比べると生豆の色は緑色が深く黒ずんでいるようにも見え、硬く感じます。特にニュークロップ(当年もの)は水分量が多いため、焙煎の仕方によっては渋みやエグ味がでることもありますので、脱水力の弱い直火焙煎では注意が必要です。
当年ものの生豆をニュークロップ、1年経ったものをパーストクロップ、2年以上経ったものをオールドクロップと言います。
更に生豆を何年も寝かせることをエージングと言い、珈琲が美味しくなるという説があります。確かに年月のたった生豆を焙煎してみるとまろやかな味になりますが、ワインのエージングなどと違い水分量が減るだけで味の熟成が起こるわけではないようです。
強いて言えば生豆には12.0〜18.0%ほどの脂質が含まれていますが、これが酸化することによって味に変化が起こる可能性はあります。また、若干ですが何らかの成分が加水分解を起すとも思えます。ただ、それらが必ずしも良い方向へ向かうとは私には思えません。エージングで効果を得るならば湿度や温度等の厳重な管理が最低限必要だと思います。
水分量の少ない豆の方が火の通りが良く楽に焼けるので、脱水力の弱い直火式の焙煎機が主流だった頃に、このような話ができたように思います。
逆に、現代の主流ともいえる熱風式の焙煎機は脱水力が強いので、水分量の多いニュークロップが適していると言えます。
なお、同じような条件で新しい豆と古い豆を焙煎すると、一般的に新しい豆はシャープで力強い味で、若干の渋みを感じることがあります。古い豆の方はソフトな味で、良い部分も悪い部分もとがったところがないと言えます。
精製された生豆はまずスクリーン(ふるい)にかけられ、大きさによって選別されます。スクリーンメッシュ18とか19とか呼ばれ、それぞれ18/64インチ、19/64インチのメッシュを通りぬけなかった大きさということになります。
通常、同じ銘柄の生豆であれば大粒の豆の方が高級品として扱われます。
生豆の名前には様々な記号や数字、言葉が付加され格付けされています。格付けは生産国独自のものが多く、その格付けの仕方や呼び方は様々です。
例えば『ブラジル・サントスNo.2、Strictly soft』であれば、まず『サントス』という名前はブラジルのサントス港から出荷された生豆ということになります。次の『No2』は欠点豆(くず豆)の混入率を示し、300gの生豆の中に含まれる欠点豆の点数(数ではありません)が4以下であるということがわかります。
欠点豆が『0』の『No.1』は事実上ありませんので、『No.2』は最も欠点数の少ない生豆ということになります。
最後の『Strictly soft』というのは実際に独自のカップテスト(味覚審査)をして格付けされた味の品質で、7段階あるうちでトップであることがわかります。
『プルーマウンテンNo.1』と言えば日本では最高級品として扱われる豆の一つです。ブルーマウンテンとはジャマイカにある山の名前で、この山麓で採れたブルーマウンテンを最高にハイマウンテン(ジャマイカの中部山岳地帯で栽培された豆)、プライムウォッシュド(ブルーマウンテン、ハイマウンテン以外の豆)と呼ばれるものもあります。
『No.1』とはジャマイカ独自の品質の格付けで1〜3まであります。
栽培された標高で格付けされるものもあります。『グァテマラSHB』のSHBとは『Strictly Hard Beans』の略でグァテマラの標高4500フィート以上で採れた小粒で硬い豆のことをいい、グァテマラの中で最高級品とされています。標高の高い順から『SHB』『HB』『SH』・・・と7段階に分けられています。
一般的には豆の大きさで格付けされるものが多いのですが、その呼び方も色々あります。
『コロンビア・スプレモ』はコロンビアの中で最高級として扱われています。『スプレモ』はスペイン語で「最高級」という意味でスクリーンメッシュ17以上の大粒の豆につけられます。スクリーンメッシュ14〜16のものはエクセルソと呼ばれています。
『タンザニアAA』『ケニアAA』などの『AA』は生豆の大きさを表す記号で、スクリーンメッシュ18〜19のものを言います。
これらのほか『HG』『CS』『AL』など様々な記号が用いられ格付けされていますが、基本的のその生産国独自のもので、世界的に共通の格付けとしては「コロンビア」「タンザニア」「ケニア」の3つだけが『コロンビアマイルド』として格付けされ、それ以外の水洗式の豆は『アザーマイルド』と格付けられています。
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