生豆に熱を加えていくと熱エネルギーによって様々な物質が分解、生成されます。
つまり焙煎とは、生豆に熱を加えることによって様々な熱化学反応を起こさせるもので、純粋に技術的、科学的なものと言えます。
品質の高いコーヒー豆を作るためには、都合の良い成分をより多く生成し、悪い成分を生成させないか排出すればよいわけです。何度も焙煎を繰り返し、経験によってこの辺のコツをつかむのも一つの方法ですが、闇雲に焙煎するのは非効率的です。
もちろん最後にものを言うのは経験ですが、より効率的に品質の高いコーヒー豆をつくれるよう、焙煎について理論的に考えてみたいと思います。
焙煎の難しいところはただ焼けばいいというわけにはいかないところです。
例えばお米を炊く場合を考えてみると、その目的はでんぷんのアルファ化にあります。具体的にはでんぷん粒に水を吸収させ約55度〜85度くらいまで加熱してでんぷんを糊化させます。糊化したでんぷんはどろどろして流動的ですので、更に約95度以上まで加熱してでんぷんを固化させ、ふっくらしたご飯になるわけです。昔からいう「始めちょろちょろ中ぱっぱ」は加熱するときのコツをうまく表現したものです。
ところが、コーヒー豆の焙煎となるとこんなに単純にはいきません。成分の生成の条件が互いに反比例するものや、排気のようにしすぎると味が薄くなり、足りないと煙がこもって味を損なうというような加減の難しいものなど、複雑に絡み合っていてどこをどうすれば良いと簡単には言えないからです。
焙煎を考える上で特に重要となるのが豆の水分量と火力の問題ですが、その前にコーヒーの味の成分について少し化学的に考えてみましょう。
コーヒー豆の主な成分
(生豆、焙煎豆は単位%、無水物中)
成分名 | 生豆 | 焙煎豆 | 抽出液※ |
全多糖類 | 50.0〜55.0 | 24.0〜39.0 | 0.7g |
小糖類 | 6.0〜8.0 | 0〜3.5 | |
脂質 | 12.0〜18.0 | 14.5〜20.5 | 0.1g |
遊離アミノ酸 | 2.0 | 0 | - |
タンパク質 | 11.0〜13.0 | 13.0〜15.0 | 0.2g |
クロロゲン酸類 | 5.5〜8.0 | 1.2〜2.3 | 0.25g |
カフェイン | 0.9〜1.2 | 〜1.0 | 0.06g |
トリゴネリン | 1.0〜1.2 | 0.5〜1.0 | -- 0.8mg (ナイアシンとして) |
脂肪族酸 | 1.5〜2.0 | 1.0〜1.5 | -- |
無機成分 | 3.0〜4.2 | 3.5〜4.5 | 0.2g Na 1mg K 65mg Ca 2mg Mg 6mg P 7mg |
腐植酸 | - | 16.0〜17.0 | -- |
水分 | -- | -- | 98.6g |
珈琲の味と成分
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コーヒーの味の主なものについて徒然と書きましたが、文中に出ているように豆の水分が焙煎の上で重要な鍵の1つを握っていると、私は考えています。
大まかですが、具体的には次のようになります。
※ここに挙げた温度は大まかなものであり、実際には豆の状態や焼き方、気温などにより調整する必要があります。
焙煎を行う時に成分の生成というものを化学的に考えることは大切なことだと思います。
とは言っても化学者じゃあるまいし、一口に化学反応といっても種類は膨大で、それぞれについて詳しく知るのは不可能です。
ただ、漠然とでも意識しながら焙煎するのとしないのとでは効率の上でかなりの隔たりがあると思います。
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