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狂牛病に関してのレポート


狂牛病(牛海綿状脳症)に関して

Gojuで使用している食材の内、牛肉や牛乳及びその加工品(バターなど)以外で牛を材料として使用しているものについて調べてみました。

対象となるのは

・マギーチキンコンソメ(ネスレ)
・デミグラスソース(ハインツ)

の二つです。

他にも菓子材料のゼラチンがありますが、材料(牛とは限らない)、及びその加工方法により 狂牛病汚染の可能性が極めて低いとのことで割愛しました。(感染の可能性は10億分の1以下だそうです。)

両社の公式見解はほぼ同じ物で下記のようになります。

2001年10月5日付け厚生労働省通達 食発294号に従い、以下の3点に関し調査しました。

(1)特定危険4部位(脳、脊髄、目、回腸遠位部)を使用していないこと。
(2)狂牛病(BSE)発生国以外の国のものであること。(オーストラリアやニュージーランド等)
(3)世界保健機構(WHO)等において示されたBSEの異常プリオンを不活性化させるのに十分な化学的処理や加熱処理がなされていること。

その結果、全商品が厚生労働省の安全性に対する基準に合致するものであることを確認いたしました。

取り敢えずは安全であるということですし、更に安全性を増すための対策も検討中とのことです。

しかし、(1)に関してはもし牛が感染していた場合、解体作業において脊髄などが飛散し、他の部位が汚染されている可能性はあります。
日本では牛の解体は『背割り』という背骨から縦に割る方法を一般に使うそうなので、脊髄が肉の部分に付着すること十分に考えられることであり、特定危険4部位以外だからといって100%安全というわけではありません。

また後ほど述べますが、狂牛病の原因とされる病原体(異常プリオン)は特定危険4部位に集中していますが、他の部分や牛乳にも存在する可能性があります。

(2)に関しては、発生国以外であっても肉骨粉を飼料として使用している限り、感染するあるいは既に感染している可能性はあります。
オーストラリアなどでは反芻動物へ肉骨粉の飼料を与えることを法律で禁止しています。ですが、禁止しているからといって絶対に使用していない、混入していない、とは言い切れません。

(3)に関してですが、どのような処理なら異常プリオンを不活性化させるのか調べてみようとしたのですが、結局分かりませんでした。
家庭及び飲食店で行う通常の調理法では異常プリオンを不活性化することはできません。


『0(ゼロ)リスク』について

現在厚生労働省や農林水産省などの機関が協力して狂牛病対策に取り組んでいます。その対策とは下記のものです。

  • 全国の屠畜場へ出荷される
    (1):24ヶ月齢以上で神経症状が疑われる牛、
    (2):30ヶ月齢以上の全ての牛、
    に対し検査を実施。
  • 検査で陽性の場合、食用、飼料用として出荷できない。
  • 外国産の牛肉は全て発生国以外から輸入

これにより、厚生労働省では市場に出回る牛肉の安全宣言を行いました。

「国際獣疫事務局」(OIE)の基準では特定危険4部位以外の牛肉や牛乳は危険ではないとされていますので、

(1)市場に狂牛病を発病した牛肉が出回る確率はきわめて低い。

(2)発病前の感染した牛の牛肉が市場に出る可能性はあるが、発病に至っていない以上、病原体プリオンの数は少なく、牛肉が危険なほど汚染されている可能性はきわめて低い。(極少量の病原体プリオンであれば発病しない可能性が高い)

したがって、健康な牛の特定危険4部位以外の牛肉であれば、今後これらを摂取することによって狂牛病に感染し発病する恐れは事実上無い。

と言えると思います。

しかし、感染の可能性は決して0ではありません。厚生労働省のとった対策も万全とは言えませんし、そもそも『100%の安全』など存在しません。
現時点で牛肉や牛乳、牛由来の加工品を摂取して狂牛病に感染し死亡する可能性は日本では交通事故で死亡する確率(約250万分の1)より遥かに低いと言えます。
0ではありませんが、事実上0%に限りなく近いか、そうでなければ既に手遅れです。

つまり、気をつける必要はあるけれども、今更国産牛肉や牛由来の加工品を拒否するのはナンセンスと言えます。

肉骨粉が狂牛病の原因ではないか、という話は以前からありましたし、現在ではほぼ事実として認められています。イギリスを始めとする発生国で問題が取り上げられていたとき、日本の諸機関が適切な対処をしなかったのが、今回の騒ぎの原因と言えると思います。

厚生労働省の広報では上記の対策をもって『安心です』という表現を使っていますが、本来ならば消費者が冷静に判断できるよう、危険性を数字なり何らかの度合いで表現すべきです。もっとも、そのような幼稚な表現をさせている原因の一つは、パニックこそおきませんでしたが闇雲に拒否反応を示す消費者の体質だとも言えます。むやみに不安だけを煽るようなマスコミの報道にも考えさせられます。

政府機関も狂牛病の蔓延を防ぐ対策と、(まじめな)畜産業者の保護という問題の間で随分と苦悩したことと思います。(肉骨粉のリサイクル業者に対する思いもあったでしょうし)

とはいえ、やはり最大の問題は行政の構造です。エイズ問題は結局何の教訓にもなっていなかったとしか思えません。まずは消費者と行政の間に適切な信頼関係が築かれなければ、今後もこのような問題は繰り返し起こると思います。

私達の生活には必ずリスクが付き纏います。100%の安全=『0リスク』要求するのは無責任な行動といえます。与えられた情報を自分で判断せず、他人に判断をさせておきながら、問題が起きるとその責任を他人に追求する、という図式はもう止めにしたいものです。(※要求ではなく理想として目指すのは良いことだと思いますが)

これからは可能な限り客観的なリスクコントロールを自分自身で行う必要があると思います。

「狂牛病の発生は自然の摂理に反してカンニバル(共食い)させられた牛の、人間に対する復讐だ」という話を聞いたことがあります。
狂牛病の急激な増加は共食いが原因でしょうけど、狂牛病や人間のクロイツフェルト・ヤコブ病そのものはずっと以前からあったものです。


狂牛病の解説

【1:狂牛病】

狂牛病は病原体(異常)プリオンと呼ばれるタンパク質が原因で、牛の脳細胞がスポンジ状になる病気です。
潜伏期間は長く2年から8年といわれ、発病すると起立不能などの脳障害を起こし、死に至ります。

(定型的)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)

病原体プリオンが原因で発症する病気ですが、感染の仕方により3つに分けられます。

1:弧発性CJD
プリオン遺伝子が突然変異を起こし、異常プリオンを生産してしまったもの。
あるいは、脳内のプリオンが何らかの原因で異常プリオンに変化したもの。

2:遺伝性CJD
異常プリオンを生み出す変質したプリオン遺伝子が親から子へ遺伝したもの。

3:医原性CJD
異常プリオンに汚染された角膜や硬膜の移植、あるいはヒト成長ホルモンの注射などによって感染したもの。

人間がこの病原体プリオンに感染し発病すると牛と同様に脳細胞がスポンジ状になり、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と同じ症状(運動機能不全、痴呆、失語など)を起こし非常に高い確率で死亡します。(現時点では致死率100%)

クロイツフェルト・ヤコブ病も病原体プリオンが原因と言われているのですが、狂牛病に由来するものは特別に 『非定型的な(新型)クロイツフェルト・ヤコブ病(nvCJD)』として区別します。

どちらのクロイツフェルト・ヤコブ病も現時点で回復した前例はなく、治療法も見つかっていません。

狂牛病の人間への感染経路は汚染された肉などを食べることにより病原体プリオンが体内に取り込まれるもので、空気感染や接触感染はしないと言われています。

つまり、狂牛病に感染した人間から別の人間に移ることはまずないと言うことです。(臓器移植や輸血、共食いなどで感染する危険はあります。)

また、病原体プリオンが体内に入ったとしても極少量であれば、発病する可能性は低いそうです。(発病した牛の脳や眼球を0.1g以上摂取すると感染するそうですが。)

【2:プリオン】

プリオンとはタンパク質性感染因子(Proteinaceous Infection Partcle)のことで、プリオン遺伝子が生産するタンパク質の微粒子です。タンパク質性感染因子というのは病気を伝達するタンパク質という意味ですが、まず始めに病原体プリオンが発見されたためこのように名づけられたのであり、正常なプリオンは感染因子ではありません。
DNAやRNAを持たないただのタンパク質ですから、細菌やウイルスなどの生命体ではありませんし、それ自身で増殖することはありません。

プリオン遺伝子は人間や牛、豚などの哺乳類から酵母にいたるまで持っている遺伝子で、人間では20番染色体に位置しています。
プリオンは神経シナプス間の伝達調節や神経細胞の維持など神経に関する重要な役割をもっていると考えられ、神経細胞の周りに集中して存在します。

【3:病原体(異常)プリオン】

タンパク質の構造

全てのタンパク質は多数のアミノ酸が結合して作られており、その形状は大きく分けて水に溶けにくい繊維状のものと、水に溶けやすい球状に分かれます。

タンパク質の構造は非常に複雑で、1次〜4次構造まであります。

1次構造:アミノ酸が鎖状に結合した配列(ポリペプチド鎖)のこと。

2次構造:ポリペプチド鎖上の近接するアミノ酸同士の水素結合によりねじれて螺旋状やコイル状になった立体的形状のこと。

3次構造:螺旋状になったポリペプチド鎖上の離れた場所にあるアミノ酸が相互作用を起こし、特定の立体形状となったもの。

4次構造:多数のポリペプチド鎖が集まり、特定の空間的配置をとったもの。

言葉だと分かり難いですね。
例えるなら1次構造はただの紐。これをよじって太くなったロープが2次構造。そのロープを特定の形状にまとめたのが3次構造。このようなロープの束をいくつか集めたのが4次構造。とでも思ってください。

正常なプリオンと病原体プリオンの違いは立体構造(3次構造)の違いだけです。

立体構造の違いとはじゃんけんのグーとパーのようなもので、どちらも構成している成分(親指、人差し指...)とその結合(親指の隣は人差し指、その隣は中指...)は同じで、立体的な形状が違うということです。

正常なプリオンは球状(螺旋形)をしていると言われ、病原体プリオンはこれがほどけた(つぶれた?)線状をしていると言われています。

【3−1:病原体プリオンの発生と増殖】

病原体プリオンは何らかの理由で変質したプリオン遺伝子が生成するものと考えられています。これは定型的クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の1:と2:の原因にあたると思います。

正常なプリオンは日常的に早いサイクルで生産され、すぐに消費されるようですが、異常なプリオンは生産されるのが遅く、かつ長く存在するそうです。

CJDの3:や(人間の)狂牛病(nvCJD)におけるプリオンの増殖はプリオン遺伝子とは関係がありません。プリオンは生物ではありませんから、分裂や出芽などの方法で自分の分身を増やすことはありません。

正常なプリオンが病原体プリオンと接触(?)することにより立体構造(3次構造)が変化し病原体プリオンに変わってしまうようです。したがってウイルスや細菌、がん細胞などの増殖とは全くべつのものです。
このようにして、ゆっくりと病原体プリオンは増殖していきます。

何故立体構造が変化してしまうのか、詳しいことは分かっていませんが、病原体プリオンが酵素のような働きをして、正常プリオンをよりエネルギーレベルの低い安定した形状の病原体プリオンに変えてしまうように思えます。

【3−2:病原体プリオンの特徴】

プリオンはタンパク質ですから熱により変性しますが、病原体プリオンは元々変性しているようなもので、通常の調理による加熱では全くダメージを受けません。

酸やアルカリにも強く、胃酸程度ではダメージを受けません。更にプリオンが持っている重要な役割のおかげか、消化酵素が全く働きません。(別のタンパク質がプリオンを保護するという話もあります。)

通常ならこのような異物は抗体反応が起きて駆除されるのですが、最悪なことに免疫機構が異物と認識しないようで全く役に立たないようです。この辺も異物として認識されるがん細胞やウイルスとは異なります。

この辺りは詳しく解明されていませんが、(1):正常プリオンが神経細胞の維持と調整に重要な役割をもち、すぐに消費されていること、(2):病原体プリオンと正常プリオンの違いが立体構造の違いだけであること、この二つが大きな理由のような気がします。

狂牛病の病原体プリオンと定型的クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の病原体プリオンの形状は違うものとされています。プリオンはあらゆる動物に存在するようですが、種ごとに形状が違います。
通常、生物には『種の壁』というものがあり、ある種の病気が他の種に感染することは稀です。狂牛病と同じ病気に羊や山羊のスクレイピー、猫海綿状脳症、伝達性ミンク脳症などがありますが、それぞれ別の病原体プリオンであり、ヒトのCJD同様、他の種に移ることは無いといわれています。

ところが、狂牛病の病原体プリオンはこの壁を簡単に乗り越えてしまうようで、ヒトはおろか実験的には豚や猫、マウスも感染するようです。(犬は不思議と感染しないそうです。)
羊のスクレイピーの病原体プリオンは何種類かあるようですが、狂牛病の病原体プリオンは現在のところ1種類だけのようで、先日日本で発見された狂牛病の病原体プリオンも、イギリスのものと同じものだったそうです。

ともかく、これらの理由から狂牛病は史上稀にみる悪質な病気と言えます。

【3−3:病原体プリオンの治療法】

現時点で病原体プリオンに感染した場合、とれる処置はありません。

細菌ではありませんから抗生物質は全く無意味です。抗体反応が起きない以上、インフルエンザウイルスに対するようなワクチンも作れません。(人間の体が病原体プリオンを異物として認識できるようになればワクチンも作れるのでしょうけど。)

素人の私が可能性として思いつくのは

病原体プリオンを無害化する物質を投入する化学療法
(例えば病原体プリオンのみを分解する酵素とか)

病原体プリオンに反応する抗体を作らせる人工的なワクチンのようなもの。
(病原体プリオンと結合する抗体は存在します。ELISA法として狂牛病のスクリーニング検査に使われています。)

などですが、結構いい加減です。(ゴメンナサイ)

ワクチンのようなものというのは、前述したように抗体反応が起きないので通常の方法ではワクチンが作れないからです。
それでたとえば抗体を生み出す細菌を作り出し、体内に摂取、後に抗生物質で細菌を駆除というようなパターンが考えられるのではないかと思います。ただ、免疫抑制剤などで通常の免疫機能を抑えなければならないでしょうけど。

ややこしいのは、たとえば病原体プリオンを無害化する物質(抗体)があったとしても、それが体内では異物として免疫機能が働いてしまう可能性があるわけで、体を守るはずの免疫機能が逆効果になってしまうわけです。難しいですね。(私が作るわけではないですけど)

やはり現時点では近いうちに治療法が見つかる可能性は低いと言わざるを得ないでしょうか。

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