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自家培養酵母(天然酵母)パンの作り方


自家培養酵母の作り方は色々ありますが、もっとも一般的で成功しやすいレーズンを使った方法を紹介します。

1:種おこし

  1. 清潔な保存用のビン(1リットルくらいの容量)を用意し、熱湯消毒しておきます。
  2. 100g程度のレーズン(ビンの4〜3分の1くらいの量)をビンに入れ、レーズンがヒタヒタになるまで水を加えます。レーズンは洗わずにそのまま使用します。
  3. 摂氏30度くらいの温かく静かな場所に置きます。始めのうちはレーズンが水を吸うので様子を見てヒタヒタになるよう2、3回水を足します。
  4. 1日に1、2度上下をひっくり返すようにして軽く撹拌し、ふたを開けて新鮮な空気を入れます。
  5. 2、3日目から発酵し始めて炭酸ガスが発生します。4、5日辺りで発酵がピークになりますので、ピークを過ぎたら液種として使えます。
  6. 熱湯消毒したザルとボウルを用意し、酵母液を濾します。このときレーズンを指で押して液体を搾り出します。残ったレーズンは処分して構いません。
    酵母液は清潔なビンなどに入れて冷蔵庫で1ヶ月程度保存できます。

ワンポイント

  • レーズンにはいくつかの種類がありますが、天日で乾燥させ洗浄していないものを使ってください。
    機械乾燥や洗浄してあるものは酵母がついておらず、培養に失敗することがあります。
  • レーズンは扱いやすいようオイルコーティングしてあるものが殆どですが、そのまま使用してかまいません。洗浄するとレーズンに付着している酵母まで流れてしまいます。
  • 培養する温度が低いと酢酸菌の活性が強く、刺激臭ときつい酸味が出てしまいます。
    摂氏30度くらいなら乳酸菌の活性が強く、やわらかな酸味になります。

2:元種をつくる

酵母液から元種を作ります。元種は小麦粉を加えることによりパンの発酵に適した酵母を増殖させる目的があります。
酵母液に小麦粉を加えて熟成させ元種にするのですが、目的に合わせて基本的に2つの方法があります。

ベーカーズパーセント

パンの材料の中では小麦粉の割合が最も多く、小麦粉を100%として他の材料を比率で表示するとなにかと都合が良いのです。
これをベーカーズパーセントと言います。

例えば小麦粉を1kg使ってパンを作る場合は『1kg仕込み』といいます。
このとき配合表で水が65%、塩が2%、インスタントイーストが1.2%ならば、

  • 1000g×65%=650g
  • 1000g×2%=20g
  • 1000g×1.2%=12g

とそれぞれの分量が分かります。
これなら配合やこねる量を変えても簡単に対応できます。

まずはどちらにも共通する基本的なことですが、

小麦粉(強力粉):液体=100:60〜65

という式を覚えてください。単位は重さです。

(A)

(B)、(A)を更に熟成させます。

(A)と同じように混ぜ合わせ、やはり温かいところに乾燥しないように置いて半日〜1日熟成させます。

1日経ったら出来上がった種を元種として、再び上記の割合で混ぜ合わせ、熟成させます。
これを数回繰り返します。元種として使用する分だけ取り除き、取り除いた分を160%として上記の割合で混ぜ合わせることにより、繰り返し使用することができます。
=>酸味のあるパンになります。発酵力は強めです。

ワンポイント

元種に限らず、発酵を正常に行うのに最も重要なのは温度管理です。

酵母が活発に活動する環境はpH4〜4.5(酸性)で摂氏30度前後の温度帯です。アルカリ性では酵母の活性は極端に低下し、場合によっては死滅していまいます。

パンに使う材料は小麦粉を始め殆どが酸性ですから通常は心配する必要はありませんが、イオン交換などで生成するアルカリ水は使用しないようにしてください。

摂氏30度前後で発酵を行うと、乳酸菌の活性が高く、盛んに乳酸を生成します。これにより生地はより酸性に傾き、酵母にとって活動しやすい環境になりますし、できあがった生地は柔らかな酸味を伴います。

発酵の温度が低いと酵母の活性が低いばかりか酢酸菌の活性が乳酸菌を上回り、刺激臭のするきつい酸味の生地になってしまいます。

なお、(B)の種を作るときに塩を加えているのは腐敗菌の増殖を防ぐ目的があります。

3:本生地作り

いよいよ元種を使ってパンを作ります。
元種は粉対比で30%以上使ってください。基本な配合は下のようになります。

配合は好みで調整してください。くるみやドライフルーツを入れるのも良いでしょう。
油脂はパンを柔らかくし日持ちも良くしますが、入れすぎると生地が重くなりパンのボリュームが減ります。

いよいよミキシングです。

  1. 小麦粉をきれいな台(大き目のボウルでも良い)に広げ、真中にくぼみを作ります。
  2. くぼみの中に油脂と水以外の材料を入れ、用意した水の90%程度を入れ元種を溶かすように混ぜます。
  3. 周りの粉を混ぜ合わせ、水分量を見ます。生地が固そうなら水を加えて調整します。
    水分量の見極めはできるだけ早めに行ってください。
  4. 生地の向きを変えつつ全身の力をこめてこねます。生地の奥を手前に引き寄せ、体重を乗せて前方に押し出します。向きを変えてこれをひたすら繰り返します。
  5. 生地が滑らかになりまとまってきたら、生地を持ち上げて台にたたきつけ、グルテンの結合を増します。生地が多い場合はひたすらこねてください。
  6. 生地の表面の光沢がとれ、少し乾いた感じに見えたらこねあがりです。(これを水切れといいます)
    油脂を加えるならここで加えて、完全に混ざるまでこねてください。
  7. 大き目のボウルに移し乾燥しないようにして摂氏30〜35度のところで約2〜2時間30分ほど1次発酵させます。(このときの生地の大きさを覚えておいてください)

ワンポイント

(A)と(B)の元種は多少性質が違います。

酵母は体内にもっている酵素の種類により、インベルターゼ活性の強い酵母とマルターゼ活性の強い酵母に分かれます。前者は砂糖を、後者は麦芽糖を主に分解してエネルギー源とします。

レーズンから取り出した酵母の場合、糖分が多い環境で増殖しましたので、インベルターゼ活性の強い酵母が多いはずです。

(A)の元種はほぼ酵母液そのままの酵母ですので、砂糖が無いと発酵がスムーズに行かない可能性があります。
また、乳酸菌などの有機酸を生成する細菌の数もまだ少ないので、酸味の少ない(または無い)パンになります。

一方(B)の元種は砂糖の少ない環境で培養しつづけましたので、うまく行っていればマルターゼ活性の強い酵母が増えているはずです。
熟成に時間をかけていますので、乳酸菌や酢酸菌などの細菌の量も多く、有機酸を多く含んだ生地で酸味を感じるはずです。うまく熟成されていれば発酵力は(A)より強く、出来上がったパンは有機酸の防腐作用のため、より日持ちします。
(失敗した場合は腐敗してしまい、膨らみが悪くなります)

なお、乳酸菌と酢酸菌の活性の違いは生地の水分量でも異なり、水分量が多めの柔らかい生地では乳酸菌が、水分量の少ない固めの生地では酢酸菌が他方より活性化します。

4:パンチ、2次発酵

生地が2〜2.5倍に膨らんだらパンチを入れます。パンチはグルテンを刺激してより強靭にするためと、一旦余分なガスを抜いて酵母の活動をより活発にさせるために行います。

生地を台に取り出し上から軽く抑えるようにしてガスを抜きます。このとき決してこねないでください。こねてしまうとグルテンの膜がこわれてしまい、パンが膨らまなくなります。

パンチが終わったら生地を折りたたんで軽く丸め、再び発酵させます。今度は1次発酵の半分の時間でOKです。

5:分割、丸め、ベンチタイム

2次発酵がすんだら生地を分割して丸めます。分割の大きさは型を使用するか、そのまま焼くか、目的に応じて変えてください。

分割した生地は軽く丸めて15〜30分休ませます(ベンチタイム)。ベンチタイムは分割・丸めで緊張したグルテンの張りをとり、成形しやすくするために行います。

ワンポイント

型を使用する場合、どれくらいの生地を使用したらいいか悩むと思います。これには型の容積に対して生地の割合を求める『容積比』という方法があります。

簡単に容積比を求めるには、まず、型に大き目のビニール袋をいれて型の淵まで水を注ぎ、注いだ水の重さを量ります。(型が水漏れしないのなら、直接注いでも良い)

こうして求めた重さ=体積を、ふくらみの悪い生地なら3.0前後、ふくらみの良い生地なら4.0前後の適当な数で割ったものが生地の重さになります。この3〜4前後の数字が容積比です。小数点の値は実際に焼いてみて調整してください。

なお、型にふたをする場合は山形に比べ、容積比を0.2〜0.4ほど増やして(生地の量は減る)計算します。

6:成形、最終発酵、焼成

いよいよ最終段階です。

ベンチタイムの終わった生地を成形します。成形にはただ丸めるものから複雑なものまでありますが、ご自分の好きに行って構いません。ただし、成形した生地の綴じ目はしっかりと綴じてください。また、いじりすぎてグルテンが裂けてしまうと膨らまなくなるので、生地に無理をさせないように気をつけてください。

成形が終わったら、天板や型に入れて最終発酵させます。ピザストーン等を使用して直接焼きたい場合は、キャンバスの上で発酵させます。

最終発酵(成形発酵)は30分〜1時間30分くらいで終わりです。型を使用する、しない、成形の仕方などによって、終了時間は変わってきます。大体、2〜2.5倍に膨らめばOKです。

オーブンは予め温めておきます。温度はオーブンによって違うのですが、家庭用の電気オーブンならば180〜220度、ガスのコンベクションタイプなら160〜200度くらいでよいと思います。

焼き方も目的に合わせて色々ありますので、スチームを入れたり(オーブンに石を入れておいて、水をかける)途中で温度を変えたり、扉を少し開けたりとご自分で工夫してみてください。

焼き上がりの時間は大きさによって変わってきますが、自家培養酵母の場合、短めよりも少し長めの方が結果が良いようです。型に入ったパンは型ごと台の上に落としてショックを与えてから取り出します。
※ショックを与えることによりパンと型の間の水蒸気が抜けることによりケーブイン(冷めるとパンの横が折れてしまう現象)を防ぐことができます。

ワンポイント

焼きあがったパンは粗熱が取れてから割ってみて、次回への参考にします。
(生地には問題がないという前提で)

  • クラスト(表面の部分)が厚いようなら焼く温度が低いか焼き時間が長すぎます。
  • クラストが薄くクラム(中の部分)がべたつくようなら、焼く温度が高すぎますので温度を低くし時間を長くします。
  • クラムがふんわりと白っぽいのにクラストがこげているようなら焼時間を短くします。
  • クラストが白っぽく、クラムがごわごわしているようなら、温度を高くし、焼時間を短くします。
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