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マスターの独り言
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- 水道管の凍結破裂にご注意を!(凍結破損裁判その1)
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【2014/12/28(日)】
[凍結破損関連]
今年は暖冬という予報もあったような気がしますが、四国で大雪が降るなど、厳しい寒さが続いています。
気温が氷点下になると気になる事の一つが水道管の凍結破裂。市町村のウェブサイト上でも、「気温が-4℃以下になると水道管が凍結し、破裂することもありますのでご注意下さい」と、記載されているところも見受けられます。氷点下になる地域にお住まいの方で実際に水道管の凍結破裂を経験された方もいらっしゃるでしょう。私もその一人です。
さて、2014年の秋、水道管の凍結破損に関する民事訴訟の判決が高裁にてありました。実はこの裁判、詐欺事件としてA損保会社から私の知人であるH氏が被告の一人として訴えられていたものです。結果は一審、二審とも原告勝訴、つまりH氏側の敗訴となりました。
民事訴訟の場合、最高裁に上告することは極めて稀であることから、事実上の確定です。
【-14℃より高い温度ではフレキ管の凍結破損は起きない?】
【裁判の概要】
裁判の内容についてですが、どこまで詳細を書いても良いのか、H氏側の弁護士から未だ返事が来ておらず不明なため、当たり障りのない範囲で記述すると次のようになります。
被告の一人であるH氏は保険会社のオプ、つまり査定人(漫画、「MASTERキートン」の主人公、平賀=キートン・太一のお仕事)をしていました。
そのH氏が保険会社から依頼を受けて査定し、水道管の凍結破損が原因であるとする調査結果を提出し、A損保会社より保険金が支払われた複数の案件が、実際は漏水事故は起きておらず(あるいは漏水事故を偽装した)、保険金を騙し取る目的の詐欺事件だったと、訴えられたものです。
【疑問点】
詐欺事件として訴えられたH氏、私は彼の人柄を良く知っていますので、「意図的に」そのような犯罪に加担することは無いと断言できますが、それをこの記事をご覧になっている方に「信じてくれ」というのはさすがに無理があると思っています。また、世間からH氏にたいして何かしらの同情でも誘う目的でこの記事を書いているわけでもありません(まったく無いとは言い切れませんが)。
私が問題にし、憤りすら感じているのは、科学的証拠にはなり得ない実験結果を原告側が証拠として提出し、裁判所でそれが採用され、判決が下された、ということに尽きるのです。
原告側は詐欺の根拠として、K技研に依頼して行った実験結果を提出しました。
その実験の内容を掻い摘まんで書き記すと次のようになります。- 水を満たした水道管(鋼管及びステンレスフレキ管)に、上水道の標準的な水圧である0.3MPa(メガパスカル)の圧を加えて密封し、冷凍コンテナに入れて冷却した。
- 鋼管は-9℃、フレキ管はー14℃まで冷却したが、水道管の破損は起こらなかった。
- 故に漏水事故が起きたとされる気温では水道管の凍結破損は起こらない。
かなり端折っていますが、概要は上記のようになります。
さてさて、科学実験等に携わったことのある方ならこの記述を見ただけで「これはおかしい」と思うはずです。どこがおかしいのか、幾つかの理由があります。
ここでは科学実験等に不慣れな方の為に、一つの例を出しておきます。
【仮想実験A】- 水道管を水道管以外が壊れることのない装置に取り付け徐々に水圧をかけた。
- 50MPaまで水圧を加えたが水道管は破損しなかった。
- 故に50MPa以下の水圧ではこの水道管は破損しない。
上記、仮想実験Aは条件付きではありますが、実験として成り立ちます。何故なら、水道管に水圧を加えていけばいずれ【必ず破損する】ことが分かっているからです。
一方、K技研が行った実験が科学的に意味を持つ為には、冷却していけば【必ず】水道管が破損することが【立証】されていなければなりません。
そうです。実は、水を満たして密封した水道管を冷却して行けば必ず破損するとは限らないのです。少なくとも私が文献を調べた限り、そのような記述はどこにも見つかりませんでした。
−9℃より高い気温でも漏水事故は起きている。
K技研の実験では「−9℃より高い温度では水道管の凍結破損は起こらない」としています。
では、実際に水道管の凍結破裂として記録されたものはどうでしょうか。2件ほど挙げてみます。
【下図は平成9年1月22日の最低気温分布図である。
上空1,500m付近では−12℃の強い寒気が太平洋の沿岸まで南下し、県内各地で−4℃以下の厳しい冷え込みとなった。】この日は名古屋で最低気温が−5.5℃まで下がり、市内の水道管の凍結・ 破壊による被害が2,183件と多く発生した。
http://www.jma-net.go.jp/
nagoya/hp/bousai/saigai/teion. より抜粋html
「名古屋だと凍結に慣れていないせいではないか」、
という意見もあると思いますので、新潟県の情報も載せておきます。 【水道管凍結で問い合わせ相次ぐ(新潟日報 2014/02/06)】
厳しい冷え込みとなった5、6の両日、県内各地で水道管が凍ったり破裂したりするトラブルが相次ぎ、水道局に相談や問い合わせが殺到した。新潟市水道局には6日は午後5時までに、過去3年間で最も多い141件の問い合わせがあった。
担当者は「今後も気温が氷点下3〜4度を下回ると、凍結被害が起きる恐れがある」として注意を呼び掛けている。
新潟市水道局への問い合わせは、5日が125件。過去3年間で最も多かった日は74件で、5、6両日は大きく上回った。上中越地方でも被害があり、5日から6日午後5時までに、長岡市水道局に70件、上越市ガス水道局には26件の問い合わせがあった。
新潟地方気象台によると、5日は最低気温が新潟市中央区で氷点下4・4度など厳しい冷え込みとなり、日中も気温が上がらなかった。6日も最低気温が上越市(高田)で氷点下4・0度となるなど、水道管の凍結が起きやすい状態となっていた。
新潟市水道局は、凍結防止策として「鉛筆の芯の太さくらいの少量の水を流し続けておくこと」とアドバイスしている。
http://www.niigata-nippo.co.jp/sp/news/national/20140206093448.html より引用
http://www.47news.jp/localnews/niigata/2014/02/post_20140206234657.html
ページは既に消えてしまっていますが、近年、-4℃程度の気温でも新潟市内で水道管の凍結破裂が起きたという記事です。
K技研の行った実験が正しいのであれば、これらの凍結破損は起こらないはずです。まさか、これら全てが偽装だとは言わないでしょう。
-9℃より高い気温で起きた水道管の凍結破損による漏水事故に保険金は支払われるのか?
「日本の裁判制度は前例主義だ」、とよく聞きます。仮に今回の凍結破損裁判で「-9℃より高い温度では水道管の凍結破損は起こらない」という実験結果が証拠として採用され、判決が下されているとしたら、今後、日本の保険会社、少なくともA損保会社は、-9℃より高い気温で起きた漏水事故に対して保険金の支払いを拒むことも出来てしまいます。
これはどう考えても現実に沿いません。
ということで、今後数回に分けてこの裁判及び実験について私の感じている疑問点を述べていきたいと思っています。
【お断り】
予めお断りしておきたい点が幾つかあります。
まず、原告であるA損保会社は上場一部の大企業であり、実験を担当したK技研もそれなりの規模を持つ会社です。重要な点は、A損保会社が保険金の支払いを嫌がってH氏を訴えたわけではなく、真実、凍結破損に疑問を抱いてK技研に実験を依頼したであろうことです。
K技研にしても、私から見ればそもそもが実験として成り立っておらず、実験に恣意的な部分が見受けられるところもあるのですが、これもやはり、悪意等は無く、極めて真面目に実験を行っているという点です。
次に、H氏について、私は無実であると信じて疑いませんが、高裁で有罪とされた以上、まずこれは覆りません。
私が調べた限り、民事訴訟が最高裁で争われるのは、無実である証拠が新たに見つかってもダメで、「原告の証拠が捏造である」と分かった場合のみ、ということでした。
K技研の行った実験はとても科学的証拠になるような代物では無いと私は思っていますが、捏造で無いことは確かです。
つまり、H氏が真実無実であったとしても、法律的には有罪であることが決定している、ということです。
以上、ご了承おき下さい。
【2015/02/22】記事の一部を訂正、及び追加最終更新日:2015/02/22(日) 18:41:28
Posted by マスター - 水を満たした水道管(鋼管及びステンレスフレキ管)に、上水道の標準的な水圧である0.3MPa(メガパスカル)の圧を加えて密封し、冷凍コンテナに入れて冷却した。
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